"ランジェリー"というものづくり
2017年 08月 24日
「ブラジャーで勲章をもらった男」
カドリールニシダの創業50周年を記念に出版された本なのですが、創業者の西田清美さんのインタビューをもとにまとめられていて、たいへん興味深かったです。
戦後、かたちばかりの"乳あて"しかなかった頃から始まって、体にフィットする"下着"へ、そして補正をともなった上質な"ファウンデーション"への変遷を追っていくことができ、わくわくしました。
また、堀江昭二さんというちょっと気難しいデザイナーが、機能性や構造にたいへんこだわって現在のブラジャーのカップやパターンの礎を築いたというのも面白いお話しでした。
ご存命だったらぜひお話しをうかがってみたかった…!
ランジェリー好きなかたならきっとクローゼットにひとつはカドリールさんでつくられたアイテムがあるのではないでしょうか?
「キッドブルー」や「ランジェリーク」、かつての「クロエ」のランジェリーをつくっているメーカーです。
そしてまた、現在「La Perla ラペルラ」のランジェリーの生産にも携わっている会社でもあります。
ご存知でしたか?
(※2020/07加筆: 現在は生産の請負は終了していると伺っています。)
世界最高峰とうたわれる「La Perla ラペルラ」のランジェリーを日本の会社がつくっている。
わたしが知ったのは何年か前なのですが、大変興奮しました。(笑)
ものすごく光栄で誇らしい気持ちになりました。(全然関係ないのに!)
プライドの高いラペルラが、なぜカドリールの工場を信頼し生産を依頼したのか?
その辺りはこちらの本に経緯が書かれていますので、気になるかたはぜひ読んでみてください。
さて、本と一緒に撮った上記↑ランジェリー画像は、現在のラペルラのコレクションから。
ブラック&ブルーのものはイタリアの自社ファクトリーでつくられる最上級のシリーズ。
手仕事で仕上げる箇所や、パーツや工程もより多く、ラペルラの美意識とテクニックが凝縮されています。
ホワイトのブリーツのシリーズは、エントリーライン。
手の届くプライスで、憧れのラペルラの世界観や上質なカッティングの美しさをたのしめるのが嬉しい!
こちらは中国・青島にある、カドリールの工場でつくられています。
乱れのない繊細なプリーツにうっとりしてしまいますね。
端正な顔立ちに、日本のメーカーのものづくりへの真摯な姿勢が現れているようです。
ではこちらの一枚ものは?
こちらもカドリールの工場でつくられています。
軽やかな一枚ものもつくれてしまうのですね。スゴイ!
また、たいへん面白いのですが、「今のラペルラもとても美しいけどむかしと何かが違うのよね」、とおっしゃるランジェリーフリークさんもおられます。
実際おっしゃるとおりなのです。
比較のためにラペルラの資本が変わるまえの画像を探してみました。
こちらは以前のラペルラのものです。
この頃あたりまでのラペルラが特に好きだったというお話しも、当店の顧客さまから伺うことがあります。
上でご紹介したブラックやブルーのものと同じイタリアの自社工場でつくられているのですが、カップやワイヤーのかたち、硬さなど、現在のものとはまた全然違うのです。
工場の設備だったり、素材や工程なども変わってきているのでしょうね。
またグローバル企業としての戦略の変遷などもあるのでしょう。
よりモダンなランジェリーブランドへと進化を続けているように感じます。
そういう流れがあるなかで、販売員やバイヤーにも知らされていない、細かなプロダクトの違いをお客さまが感じているというのがおもしろいな、と思います。
本のなかで西田さんもおっしゃっているのですが、「バイヤーがわからなくても、お客さまにはわかってしまう」。
体に触れて一日過ごすものだから、好みの着心地というのにはやはりお客さまは敏感です。
かつてのラペルラのやわらかさやつけていないような軽やかさに近いランジェリーというと、現在のブランドでは同じくイタリアの「Exilia エクセリア」が近い気がします。
(※2020/07加筆: 2019aw よりExiliaはランジェリーの生産をストップしました。こういう仕立てのものは手に入らなくなるのかもしれません。それもまた時代の流れなのでしょう。)
(画像のテラコッタブラウンのものがExilia、ホワイトはむかしのLa Perlaです。)
形状はラペルラとはちがいますけど、カップの薄さやしなやかでソフトなタッチにイタリアのよき手仕事のあたたかみが残っているなと感じられる着用感です。
実はエクセリアのアトリエは、ラペルラのすぐお隣なんだそう!
ラペルラのCEOがエクセリアのブラジャーを自社のスタッフにみせて、こういうものづくりをするようにと言ったお話しなんかも耳に届いています。
おもしろいですね。(笑)
ご近所ならではの、技術の親近性などもあるのかもしれません。
30代になって硬いランジェリーに息苦しさを感じるようになってきたら、ぜひ一度試してみてください。
ラペルラは若いうちからでもスタイリッシュで素敵じゃないかしら。
エントリーラインは、国産の高級ランジェリーよりむしろ手が届きやすかったりも。
イタリアの最先端の洗練された美意識を体感できるブランドなので、ファッションがお好きなかたにもぜひ手に取ってほしい。
なんだかとりとめなくなってしまいましたが。
女性のライフスタイルの変化とともに現れた「ブラジャー」。
当たり前のように今日私たちは身につけているけれど、実はまだ歴史も浅く、日々進化を続けています。
世界中で創意工夫がなされ、商機と意義を見出した男たちが奔走し(ご苦労も多いでしょうがなんだか可愛いですね。笑)、女たちも活躍し、現在のかたちになってきた。
そのなかにたくさんのドラマや秘密がこめられていることを垣間見られる内容でした。
そして現在、日本でも新しい感性をもつランジェリーブランドがたくさん芽吹きはじめています。
これまで"ファウンデーション"としての「機能」を優先するプロダクトが多かったのに対し、「感性」で着る"ランジェリー"の選択肢も増えてきました。
とても頼もしくたのしい現象です。
若いデザイナーさんからランジェリーを思うように生産できる工場がなかなか見つからないというお話しもよくうかがいます。
お力になれることが見つからないのが歯がゆいですが、工場が変わるとプロダクトとして全く別ものになることだけは、よくわかります。
どうかよい工場とご縁があるようにと、願ってやみません。
この本が、ランジェリーを愛する皆さまの何かのご参考になったらいいなと思います。
by lagouttesucree
| 2017-08-24 18:59
| ランジェリーよもやま
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